猫々ふぁくとり〜

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help RSS 喰うなら喰やれ 3-2

<<   作成日時 : 2005/11/24 20:55   >>

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「………ッ!!」
 サリアは不埒者を一撃の下に沈めた。これで今日はもう三人目である。
 裏通りの更に裏通りを、サリア達は歩いていた。表通りは自分一人では兎も角、この娘と一緒では目立ち過ぎて歩けない。仕方なくこのような道を歩いているわけだが、それにしても聞きしに勝る劣悪さだ。ここはヒトの町だ。しかし、この通りで目に入る人影は亜人である。少し見上げる程の高さの窓に覗く彼等は皆、客引きの為に扇情的な格好をしている。
 ここは亜人の売春街であり、その客はヒトであった。先程から声をかけてくる男達は皆、二人を買おうとした者達だった。声をかけてきた者すべてを相手にしていたらきりが無いので、しつこい奴だけは叩きのめしておいた。それにしても―――虫唾が走る。
 亜人と、そうでない者の交わり。それは、『森』の中で彼女が見た略奪を思い出させた。
「―――いや、アタシはそんなもの―――」
 見たことが…無い、はず―――だ。
「だいじょうぶ」
 少女が声をかけてくる。抑揚の無いその口調では、それが励ましなのか疑問形なのか、判別は出来なかった。けれど、アタシは意識を強く持ち、「大丈夫」と、強がって見せた。
 しっかりしなくては。自分は何をしにこの町へきたのか、忘れてはいない。そう、アタシは帰るんだ。アタシの村へ。
 不意に、視界の端にゴミが写った。ゴミはこちらをじろじろと眺め、何かを言おうとしている。
「ねーちゃん」
 五月蝿い。ゴミは喋るな。言葉を放つな。
「おい、ねーちゃん」
 言うな。その先を言ったら、
「おい、ねーちゃん、聞いてんのかよ。いくらなんだよ、おい」
 コロ…ス…ッ!
 
 掌底。肉の浮いた腹にヒット。
 身を離しつつ跳び、上段回し蹴り。禿げた側頭部にヒット。
 壁を蹴り、三角跳びから回転踵落し。だぼついた肩口にヒット。
 着地と同時に再度跳び、膝蹴り。汚らしい鼻っ面にヒット。
 落ちつつ止め、蹴り上げ。口には出せないところにヒット。
 
「ふぅ」
 落ち着いた。やっぱりヒトを殴ってるときが一番落ち着くわ。まぁ、ここじゃ殺せないのがシャクだけど。でもまぁ、一月は何も食べられないって、そりゃ死ぬか。ふん、自業自得ね。さて、
「終わったからいくわよ…って、あれ?」
 …居ない!
「どこっ!」
 すぐそこの角を、あの子の羽の先が曲がっていった。すぐに追わなきゃ!






「ほいほいほいっと」
 道路のあちこちに落ちているガラクタ類を跳び越え、走る。手には翼人の女の子。ぼうっと、ボクの顔を見上げている。ははは、そんなに見つめちゃ照れるよ、いくらボクがかっこいいからって!口に出したいけど、舌を噛むから出せない。悔しいなぁ、こんなに可愛い子なのに面白いところが今は見せられない。ふ〜ふ〜ふ〜。ふ〜ふ〜ふ〜。ふ〜ふ〜ふ〜、ハッ!危ない危ない。また鼻息が荒くなってたか。こればっかりは習性だから直しようが無いからしかたないけど、かっこ悪いからどうにかしたいな〜っと、あ、変に思ってないかな、この子。
「???」
 不思議で仕方がない、という顔をして首を傾げている。ああ、もう、ほんっとに可愛いなぁ。
「待てーーーッ!!」
 え!?もう来たの!?あの人、さっきすんごくごつい人とケンカしてなかったっけ!?
 このままじゃ追いつかれる!…しょうがない。本気で走るか。
 加速。四本の足という、歯車のスピードを上げる。蹄がさっきとはまったく違うリズムを奏でる。さて、これで追いつかれないは…ず!?
「待てっつってんのよ、この駄馬ーッ!」
「ウソッ!!あのヒト速過ぎ!」
 ゴールまで一直線。あの突き当たりが、博士のラボ!どうにか追いつかれないけど、間に合うか!!




「待てーーーッ、そこの馬ッ!あ〜もうっ、なんでこんな街中で馬が走れるのよっ!」
 中身がぶちまけられ横たわったゴミ箱やらの障害物を易々と跳び越え、馬は走る。あの騎手は相当の腕を持っている。でもなぁ、あの騎手、足が無いような…。
 馬の姿が突き当たりの建物の中に消えた。すぐに大きな音を立てて、扉が閉められた。あそこが変態誘拐魔の根城かッ!
「………潰すッ!!」
 一分ほど遅れ、アタシは扉に辿り着く。スピードを緩めることはせず、蹴り破った。
 蝶番ごと、扉は弾け飛んだ。
 ―――ぬちゃっ。
「きゃっ」
 着地した床には、気持ち悪い液体で一面びたびたになっていた。
「なによ、これ…ぅわっ!」
 目の前で急に炎が上がった。緑色をした炎はものすごい勢いでアタシを包み、一瞬で消えた。
「目くらまし…?驚かせないでよね」
「ようこそお嬢さん。でも、ちょいと騒ぎ過ぎ。もうちょい静かにしてちょうだい」
 声のする方を見ると、炎の元が居た。フードをかぶってて、その下の顔はニタニタと笑っている。明らかにあれは変態誘拐魔だ。
「殺す!」
 跳躍…できなかった。途中まで、体は着いてきた。けれど、足が着いてこなかった。足が、地面にへばり付いて離れない。
「なんのっ!」
 無理矢理、足を引き剥がし、跳んだ。しかし体勢が悪いせいでスピードが乗っていない。しかも、
「…かっ…」
 変態誘拐魔のトンファーが、アタシのお腹にめり込んだ。女の子のお腹をなんだと思ってるのよ…こいつっ!でもこの程度じゃ落ちないよっ!アンタが思ってるより、アタシ達はタフなんだっ!
 アタシは腕を振り上げ、肘を尖らす。が、その肘が落ちる前にお腹が爆発した。
 暗転。アタシの意識はここで途切れた。





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