喰うなら喰やれ 5-1


「それで、サリアル=リーウェル。君は獣人のお姫様だったわけだけど、この扱いは何かな」
「…こっちが聞きたいわよ、そんなもの」
 非常に不機嫌な声で、サリアは答えてくれた。それは当然だろう、なんたって久しぶりに会った同族に捕縛されているのだ。石造りの、ヒトでは到底脱走不可能な牢に僕とサリアは捕らえられていた。天の岩戸の如く、扉は分厚い岩だ。獣人が五人くらいでやっと動かせるような。絶対に脱走も出来まい。
 まぁ、妥当な扱いだろう。出戻りの、ヒトに捕まって脱走してきた者を簡単に信用するほど獣人も馬鹿じゃあない。
「僕としてはさぁ」
「…なによ」
「免罪符が欲しかったんだけどねぇ」
「何よ、ソレ」
「なんでもないですよ」
「じゃあ言うなよ」



 無言の時が続く。その内に、誰かが扉の前に現れた。誰か?一人では何も出来ないだろうに。しかし、
『何をしに帰ってきた』
 岩牢に響く、低くしわがれた声。この声は、聞き覚えがある。たしか、
「故郷に戻るのがいけないことですか、お爺様」
『悪いとは言わんさ。ただ、何をしにそんな男と帰ってきた』
「そんな男?こいつの事?」
『そうだ。トカゲ、聞いておるのだろう。何をしに来た』
「………」
『答えろ』
「………」
『答えろと言っているんだ、裏切り者』
「トカゲじゃないさ、僕等は竜だよ、狼」
『戯れるな。竜がヒトに傅くものか』
「どの部族にも言えるけどさ、亜人はプライドを高く持ちすぎだよ。所詮作られた種、淘汰される運命に在る実験生物なんだから」
『戯れるなと言っている。お前の言うことはあの時から変わっていない。殺されに来たのか。それとも他に用があって来たのか、そう聞いているんだ』
「ルガル翁、竜人の長、ウェイン=ダイドとして要請します。ヒトに反旗を。『森』に潜む全亜人を動員し、我等を生んだあの忌まわしき帝国を共に討ち滅ぼしましょう」
「語るに落ちたな、トカゲ」
「ええ。まったくもって不甲斐無いことです。自分の行った事を後悔するのは、あれが初めてでしたから」
「…アレのきっかけはなんだったか、覚えているか」
「…獣人狩り、ですか」
「そうだ。で、それは、だ」
 ルガル=リーウェル、獣人の長老は後ろ手に縛られたウェインの前髪を掴み引っ張り上げ、
「テメェの所為だ!!テメェが自分と馬糞野郎共の安全だけを材料に俺等を売った!だから俺達は家を焼かれ、人を捨てなくちゃならなくなった!!今更どのツラ下げて俺の所へ来た!!『森』に残ったトカゲはお前一人だ!他の者は全員殺した!この森には一匹たりとも残っちゃいねぇぞ!!」
 土の床に叩き付けた。
「テメェのやったことはこの『森』に棲む亜人全てに許されることじゃねぇ。わかってて来たんだろうが、今更そんなこと言うんだ。話だきゃあ聞いてやろうじゃねえか。サリアを連れて来てくれた礼だ」
 免罪符は効いたようだ、とウェインは地に顔を伏したままほくそ笑んだ。
「テメェ等が森に入ってからの動向は全部掴んでいる。どうやら別働隊が居るみてぇだが、そいつは何だ」
「彼女の従者で、私の知人です」
 視線で、あの得体の知れない少女の方を指す。
「見たところ、只のガキじゃねぇな。何者だ」
「アレは、世界です。いえ、正しくは世界に繋がる門です」






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