喰うなら喰やれ 5-3




「はてさて、今日はどういう日なんだか」
 もう戻ってこないと思っていた十人の孫のうち二人が揃って戻ってきた。双方とも、招かれざる客人とともに。
「めでたい日に決まってるでしょ」
 その片割れのはねっ返りがいとも気楽に言い放ってくれる。
 無理を言う娘だ。ヒトの罠かもしれんと思うことは当然だろうに。
 実際、『森』が騒がしい。獣がやけに騒いでる。
「で、お爺様。アタシは縛って、アイツを縛らないのはどういう了見なのよ。アレの姉として聞いておきたいんだけど」
「言うまでも無い。信用の差だ」
 そう言うとサリアは何も言わずに消えた。機嫌を損ねたか。まだまだ子供だな、あの程度で怒るとは。
 信用というのは、付いてきたおまけの信用の差だ。トカゲと傷ついたヒトの子供では、トカゲの方が断然信用ならん。
「なぁ、トカゲ。本当にヒトは来ておらんのか」
「さぁねぇ、知りません。ただ、あの子の身分からすると、もしかしたら来てるかもしれないね。セントルーシカの市衛長の息子だから」
「人質のつもりだったのかね」
「彼はお孫さんの友人ですよ。たぶん、ここへ来た目的は和平」
 そう言うトカゲの顔には表情が無かった。
「ヒトの世界に感化された子供の考えそうなことです」
「ああ、そうだな。事態はもうそんなことじゃ済まない。いや、最初から住むはずが無かったんだよ」





「姉さん、タクミは、タクミは大丈夫ですか!? 」 
「大丈夫よ、だから落ち着きなさい・・・っていうかカーシュ、アンタまずは姉に会えたことを喜びなさいよ!」
「ご、ごめんなさい…。いや、なんと言ったらいいのかな。いえ…実はあまり心配してなかったので」
「死ねぇぇぇいッ!!」
 姉の本気蹴りが来る。致命傷級の一撃をボクは受け止めずに(受けたら確実に死ぬ)流して力を逸らす。
「むっ」
 次は連撃。
 右、左、上、下。
 軽い威力の、ひざから下だけの蹴りの瞬間的なコンビネーション。
 ガードされてもヒットしても反動でどこへでも振り足を散らせることが出来る、姉さんの得意技。
 これはジャブみたいなもので一発でもまともに入れば、次はとどめの一発が来る。
 だから、受けない。
 流す。
 それを流されると次は大振りのトリッキーな技に移ろうとするのが姉さんの癖。
 言っちゃ悪いけど、単純すぎる。
 蹴り上げに合わせて、姉さんが跳ぶ。
 肩を掴んで、そのまま回って背中に打ち込む気だろうが、そうはいかない。
 闘うのに必要なのは何も、足技だけじゃないんだ。
 身を屈めつつ、右の蹴り上げ足と伸ばされた左手を掴み、横に回す。
 そのままねじり切るイメージで地面に叩きつける!
 なんとか頭からの激突をうまく避けた姉さんは、そのままの勢いで転がって…!?
「うわぁッ!?」
 んなっ、無茶苦茶な!?
 掴まれた手足で、しかもその崩れた体制で逆にボクを振り回すなんてッ!!
 手を離さなきゃ、今度はボクが叩きつけられる番だ!!
 咄嗟に手を離す。
 が、ソレが決定的な隙だった。
 振り抜いたその足の反動で姉さんは起き上がり、既に体勢が崩れかけていたボクは姉さんを懐に入れてしまった。
 胸に衝撃。
 後ろに倒される。
 マウントポジションから何かされるかと思ったけど、何もしてこない。
 ただ、姉さんは笑っていた。
 けど、泣いていた。
「おかえり」
「…ただいま」





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