喰うなら喰やれ 7-2



 

 聖ルーシカにはろくな物資は残っていなかった。人とモノが無い都市は抜け殻だ。ヒトは何故か、亜人が攻め入ることを予測していた。いや、前線の都市なのだから作った時点で折り込み済みの事態か。しかしそれにしてはおかしい話だ。警備の兵はろくに抗戦もせずに逃げ出した。
 あの大将が一人で勝つつもりだったのか、それともこの都市自体が罠なの
か。ここを攻めさせ亜人の陣営に陣を張らせ、本隊は町の外で一般人の退避を行い転進、その上で地の利を活かした戦術…予め用意した罠を使い勝つつもりなのか…。
 考え始めると疑心暗鬼は止まらない…。いや、それにしては攻めてくる雰囲気はない。遅すぎる。
 一夜を完全に過ぎてからでは奇襲にはならない。あの大将は聖ルーシカを明け渡したのだ。ヒトにとっては百害あってなんとやらの行為以外のなにものでもない。読めない。
 まぁなんにせよ、今の問題は物資か。さて、食料も殆どないし、少人数で町を警護するには弾薬が使えたほうがいいのだけれど…それも無いか。私個人で集めた範囲じゃ、亜人数百人分の生活など賄えない。聖ルーシカは森との境界線で軍隊がいたからこそ、それなりの金が動いていた町であったし。
「ウェイン」
 振り向くとそこには獣の長が居た。
「ルガル翁、なにか」
「客だ。商人だとよ」
「商人…」
 風…風が吹いたのを感じた。


 「中央に攻め入る、そりゃ豪気だ。ヒトにゃ思い浮かばんわな。命は捨てたくないしさ」
 商人、キーウイ。変な男だ。
 ヒトが今や亜人の巣窟であるこの町に単身乗り込んでくること自体馬鹿らしいが、言っていることも馬鹿らしい。今は無償で物資を提供する。後で中央を落とした際に見返りを求めるとかなんとか。
「すっからかんか大儲けか。商人つーよりゃ、博打打ちの気分だいね」
 そう言うとキーウイはからからと笑った。
 聞くところに依れば、聖ルーシカは数日前から既に撤退の準備を進めていたとか。町に居たのは軍人の言うことなど最初から聞く気の無いごろつきだとか腕に覚えのあった連中だったとか。道理であの尋常じゃない速さと、一般人の死体が少ないわけだ。
「それで、何を持ってこれるんだい。返答によっては生きて返さないし、その証明のひとつも持ってるんでしょ」
 そう僕が言うと、さっきまでの砕けた雰囲気は一変した。
「もちろんですよ。コレが―ー―」





ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック