喰うなら喰やれ 7-4





 物資を補給した亜人の進軍は速やかだった。
 聖ルーシカを拠点として、一月を待たずにヒトの棲家を減らしていった。
 その中にいて、タクミは何を思うのだろう。ロースは時たま夜に陣からタクミとともに抜け出て、ただ星を見ていた。
 タクミが口を開いた。
「亜人は怖い。そう教えられてきた」
 でも、話せば人は人だ。タクミはそう続けた。
「ボクは今でもヒトが怖い。多分これからもそうだよ」
 交わらないな、などと呟くタクミ。声は震えていた。
 風が強くなってきた。少し冷える。
「ヒトは本当にヒトなのか。俺は今まで自分が信じてきた通り、ただのヒトなのか…それすら自信が無いんだ」
 呼吸をひとつ、タクミは置いた。
「俺はお前が獣と闘っているとき、バケモノだと思った。でも、親父があんなモノになったときはそれ以上に驚いたし、やっぱりバケモノだと思った」
 タクミは目を合わさない。
「君はもうヒトじゃない。竜人の数少ない眷属だよ。賢く、強い、最優の亜人さ。…言っててなんとなくわかった。だからヒトに利用されたんだよ、竜人は」
 竜人は合理的で冷徹だ。彼等の情は同属には深いが、他の獣達には浅い。呪術式で亜人が力を封じられたらすぐにヒトに寝返った。そして裏切られ、その数を減らした。
「なぁ、あの…『にく』食べるヤツ、どう思う?」
「可愛いよね」
「どこがさ!?」
 さぁね、などとてきとうな返事を返しておいた。
 あれは『世界』だ。全ての可能性を肯定する。想像でもなんでも、縛ることは出来ない、『世界』だ。アレは味方でも何でもない。単に、ボク達はアレがいなければヒトに勝つことが出来ないから、アレを護る。
 なに、世界はボク達に優しく出来ている。気楽に行こう。全てはそう、うまく行く。





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